空蝉巻 あらすじ

源氏物語

(帚木巻をそのまま受けて)
源氏は空蝉に拒まれ、逃げられた口惜しさに寝られず、まだ暗い中を紀伊守邸を出る。空蟬の方も、ああしたこととはいえ、並々でなく気掛かりで、平静ではいられない。源氏は空蟬の弟小君に、またの対面の機会を作り出すように言い続けた。
小君は幼い心にも、どんな折に源氏を姉に会わせられるだろうか、と機会を待っていた。紀伊守の留守、女同士でくつろいでいるところへ源氏を導く。源氏は、空蟬と紀伊守の妹、西の御方(=軒端荻)が碁を打つところをのぞき見る。空蟬の方はひたすら慎み深く、目立たない姿でいる。軒端荻の方はいかにも美人という容貌であるが、肌もあらわにだらしなく、源氏はもっと落ち着いたところがあれば、などと思って見ている。どちらかと言えば見栄えのしない空蝉の、品あるたしなみ深さに引きつけられた。一方の軒端荻の方のはしゃぐ姿に、軽々しいとは思いながら捨てがたい思いもする。源氏が知っている女はみな、ひきつくろった姿だけで、こんなふうに女の気を許した姿を見ることはなかったのである。
小君は部屋に入ってしばらく寝たふりをして源氏を部屋に入れる。空蟬はあのこと以来寝覚めがちであった。隣には軒端荻が寝ていた。そこへこの衣擦れの音がした。空蟬はとっさに生絹(すずし)の単衣だけを着て、抜け出した。
源氏は部屋に入り、次第に人違いと気付く。軒端荻はだんだん目覚めて、驚いた様子だが、深い心用意があるわけでない。源氏は方違えにかこつけて会うために来ていたなどと言い含める。憎くはないけれど、この人に惹かれるところはなく、空蟬を忘れがたく思う。
それでも軒端荻と情けをこめて約束し、空蟬が脱ぎすべらせた薄衣を手にして部屋から出た。
源氏は二条院に帰る。小君に昨夜のありさまを話して、そばに寝かせて恨み言をいい、また睦まじく語らう。源氏は無念さに眠れない。空蟬に贈る手紙というのではなく、歌を手習いのように書き流す。
小君は源氏のすさび書きを姉に見せる。空蟬は思い乱れ、結婚前の身の上であったならと、忍びがたくて
 空蟬の羽におく露の木がくれて
             しのびしのびにぬるる袖かな

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